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火蓋を切った不動産流通「新旧勢力の戦い」

他国に比べ、中古住宅の売買が少ない日本。空き家増も問題になり、国をあげて不動産流通市場の活性化を推進している矢先に、これに逆行する出来事が起きた。

大手不動産流通業団体の不動産流通経営協会(FRK、田中俊和理事長=住友不動産販売社長)が、新興勢力のヤフーとソニー不動産に「待った」をかけたのである。FRKは12月10日をもってヤフーのウェブサイト「Yahoo!不動産」への物件情報提供を停止。その理由を、「ヤフーがソニー不動産と資本・業務提携し、情報サイトとしての中立性を損ねたため」とする。

FRKの決定を知った業界関係者には衝撃が走った。2014年に設立されたソニー不動産は、不動産の流通革命ともいえる新しい試みを次々に打ち出し、中古住宅仲介では売り手だけを担当する「片手取引」を標榜している。FRKに加盟する大手不動産流通会社ら旧勢力は売主、買主双方を1社が担当する「両手取引」を推進し、双方から手数料を取ってきたため、とうとう黙っておれず、目の敵のソニー不動産いじめに出たものと受け止める向きが多い。

「Yahoo!不動産」に多数の物件を掲載するヤフーは、15年7月にソニーの100%子会社であるソニー不動産に43.7%もの出資を行ない、11月5日に共同で新しいサービスを立ち上げた。新サービスは「Yahoo!不動産」上に設置した不動産売買のプラットフォーム「おうちダイレクト」。ソニー不動産のノウハウと信用力を活用し、ウェブ上で売主、買主をマッチングするものだ。中古住宅を所有する個人が、CtoCで自ら価格を決めて売り出せるのが目玉。売主は無料で同サイトに物件情報を掲載できる上、売却仲介手数料が無料になる。既存の仲介業者が入る余地はない。

当面は都心部6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区)の中古マンションが対象で、12月10日の段階で個人が売り出した物件の掲載数は18件。首都圏で仲介業者が扱う通常物件を含めれば、全体では1万7千件ほどを掲載している。

FRKが「中立性」の点で批判していることについて、ヤフーは「消費者にとって中立であることが重要」とし、とりあう様子はない。一時、情報提供の継続を求めFRKと交渉中との話も流れたものの、12月を待たずに打ち切られている。配信停止で物件掲載数は減少したが、FRK以外の物件情報も多数保有するヤフーは「同業他社と比較しても遜色ない規模感」と涼しい顔だ。

ともあれ12月10日の情報提供停止で、FRKやそこに連なる大手不動産流通会社ら旧勢力と、新興勢力との戦いの火蓋は切られた。時代の波に乗る新興勢力だが、旧勢力のバックには金融業界が控えており、とりわけ信託銀行などの不動産部隊は強力な「両手取引」推進勢力となっている。「おうちダイレクト」に対し「売主に対して買主のメリットが少ない」「売り物のひとつであるオンライン上の不動産査定でシステム推定価格の裏付けとなるデータが公表されていない」などの声もある。

FRK勢力の業者間だけのBtoBネットワークシステム「レインズ」に対抗する新興ネット勢力を前に、レインズをつくった国土交通省はどう動くか。業界の動向から目が離せない。

(この原稿は、月刊情報誌『FACTA』1月号に掲載された下記の記事の文章です。)

FACTA1月号掲載記事
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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